簡易課税の届出、まだ間に合います【2割特例利用者向け】
こんにちは、税理士の廣島です。
「2024年の売上が1,000万円を超えてしまって、2026年分は2割特例が使えないと気づいた。でも簡易課税の届出書って、2025年の年末までに出さないといけなかったんじゃ…?」
2026年に入ってから、こうした状況に気づく方が少なくありません。
結論から言うと、まだ間に合います。
2割特例を使っていた方には、簡易課税の届出書について特別な猶予制度があります。この記事では、その仕組みと対応のポイントを解説します。
2割特例、簡易課税、原則課税についてはこちらの記事をご参照ください。
簡易課税とは?(おさらい)
消費税の計算方法には、大きく分けて2種類あります。
本則課税:売上で預かった消費税から、実際に支払った仕入・経費の消費税を差し引いて納税額を計算する方法。
簡易課税:売上で預かった消費税に「みなし仕入率」をかけて納税額を計算する方法。業種ごとに仕入率が決まっており、実際の経費を1件ずつ集計する手間が省けます。
つまり、簡易課税が選べれば、計算が楽になるうえに、場合によっては納税額も少なくなるというメリットがあります。
適用できる条件は「前々年の課税売上が5,000万円以下」。多くの個人事業主・小規模事業者が対象になります。
なぜ2026年分から2割特例が使えなくなるのか
消費税の2割特例は、「インボイス登録をしなければ本来は免税事業者だった方」を対象とした特例です。
基準期間(2年前)の課税売上が1,000万円を超えると、インボイス登録の有無にかかわらず課税事業者になります。つまり「インボイス登録がなくても課税事業者」という状態になるため、2割特例の対象外となります。
2024年(令和6年)の課税売上が1,000万円を超えた方は、2026年(令和8年)分から2割特例が使えません。
では、簡易課税を使うには?
簡易課税を使うには、「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出する必要があります。
しかも原則として、適用を受けたい課税期間が始まる前日までに提出しなければなりません。個人事業主の場合、2026年分から使いたければ2025年12月31日が期限です。
「もう2026年に入ってしまっている。詰んだ…」と思った方、少し待ってください。
2割特例を使っていた方には「W猶予」があります
ここが今回のブログの最重要ポイントです。
まず大前提として、簡易課税を選ぶには届出書(消費税簡易課税制度選択届出書)の提出が必ず必要です。 申告書に記載するだけでは選択できません。
ただし、2割特例を使っていた方には、通常のルールとは大きく異なる2段階の猶予(W猶予)が設けられています。
猶予①「後出しOK」
通常、簡易課税は適用を受けたい課税期間が始まる前日までに届出書を提出しなければなりません。つまり2026年分から使いたければ、2025年12月31日が期限です。この期限を1日でも過ぎると、その年には使えないのが原則です。
ところが2割特例の利用者は、課税期間が始まってから届出書を提出しても間に合います。 2026年に入ってから、あるいは年が明けてからでも大丈夫です。「後出し」が認められているのです。
猶予② 課税期間の末日(12月31日)ではなく、確定申告期限(3月31日)まで
さらにもう一段、猶予があります。後出しの期限が「その年の12月31日まで」ではなく、翌年の確定申告期限(3月31日)まで延長されています。
つまり、令和7年(2025年)分まで2割特例を使っていた方が令和8年(2026年)分から簡易課税を使いたい場合、2027年3月31日までに届出書を提出すれば間に合います。
2026年分の申告書を作りながら「今年は簡易課税のほうが有利だった」と気づいたとしても、その確定申告のタイミングで届出書を一緒に提出できるということです。これがW猶予の威力です。

国税庁「2割特例や3割特例を適用した課税期間後の簡易課税制度の選択」
「3割特例」という選択肢もある(個人事業主のみ・条件あり)
なお、2割特例とは別に、令和8年度税制改正で3割特例という制度も設けられています。
適用できる方の条件は以下のとおりです。
- 個人事業主のみ対象(法人は使えません)
- 基準期間の課税売上が1,000万円未満であること
この条件を満たす方は、届出書の提出が不要で、消費税申告書に所定の記載をするだけで適用できます。
ただし、2024年の課税売上が1,000万円を超えている方は、この3割特例も対象外です。簡易課税か本則課税かを選ぶことになります。
届出を出し忘れるとどうなる?
特例の対象外になった場合、または特例の記載を忘れた場合はどうなるか。
原則として、届出なしに本則課税が1年間強制適用されます。
本則課税が悪いわけではありませんが、仕入・経費の消費税を1件ずつ集計する手間がかかります。そして業種によっては、簡易課税より納税額が大きくなるケースもあります。特に人件費が中心のサービス業やフリーランスの方は、この差が大きく出やすいので注意が必要です。
シミュレーションで確認してみましょう
例として、年間の課税売上が300万円(税別)のサービス業の方を見てみます(みなし仕入率:50%)。
| 計算方法 | 計算内容 | 納税額 |
|---|---|---|
| 簡易課税 | 預かり消費税30万円 ×(1-みなし仕入率50%) | 15万円 |
| 本則課税 | 預かり消費税30万円 - 実際の仕入税額控除8万円(仮定) | 22万円 |
この例では、年間で7万円の差が生まれます。これが毎年続くとなると、洒落になりません。
もちろん、業種や経費の規模によって有利・不利は変わります。「自分の場合はどちらが得か?」は、必ずシミュレーションで確認することをおすすめします。
注意:簡易課税には「2年縛り」があります
簡易課税を選択する前に、必ず知っておいていただきたいことがあります。
簡易課税を一度選択すると、原則として2年間は取りやめができません。
つまり、2026年分から簡易課税を選んだ場合、2027年分も引き続き簡易課税で申告することになります。「今年はよかったけど来年は本則課税のほうがよかった」となっても、途中でやめることはできません。
売上の増減、経費の変化、業種の変化など、2年先の状況も含めてシミュレーションしてから届出書を提出することが大切です。
2026年にやるべきこと・チェックリスト
| タイミング | やること |
|---|---|
| 今すぐ | 自分が2割特例を使っているか確認する |
| 今すぐ | 3割特例の対象か確認する(個人のみ・基準期間売上1,000万円未満) |
| 令和8年(2026年)12月31日まで | 簡易課税・本則課税、どちらが有利か確認する |
| 令和8年(2026年)12月31日まで | 簡易課税の届出書を提出する(推奨) |
| 令和9年(2027年)3月31日まで | 【猶予期限】2割特例利用者は令和8年(2026年)分の確定申告と一緒に届出書を提出できる |
まとめ
- 2割特例が使えるのは令和8年(2026年)分まで
- 簡易課税を使うには届出書の提出が必須(申告書への記載だけでは選択できない)
- 2割特例を使っていた方は届出書の提出期限が猶予されている(適用を受けたい課税期間の確定申告期限まで=2027年3月31日まで)
- 3割特例という選択肢もあり(個人事業主のみ・基準期間売上1,000万円未満・届出書不要)
- 届出を忘れると、1年間は本則課税が強制適用される可能性がある
- 有利・不利は業種・経費規模によって異なるため、必ずシミュレーションで確認を
- 簡易課税を選択すると2年間は取りやめ不可(2年縛り)のため、2年先を見越した判断が必要
簡易課税を選択すると2年間は取りやめができません。「間に合うから」と急いで届出を出すのではなく、2年分をシミュレーションしたうえで判断することが大切です。
「自分はどちらを選ぶべきか?」「届出の手続きをどうすればいいか?」と迷っている方は、ぜひ一度ご相談ください。
ひろしま税理士事務所
